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  <subtitle type="html">小説用</subtitle>
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  <updated>2010-07-02T21:23:44+09:00</updated>
  <author><name>No Name Ninja</name></author>
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    <published>2011-12-31T01:00:00+09:00</published> 
    <updated>2011-12-31T01:00:00+09:00</updated> 
    <category term="はじめに" label="はじめに" />
    <title>このサイトについて</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[サイト名：U-Ra（うら）<br />
管理人：有利亜 <br />
連絡先はフッターに置いてあります。<br />
<br />
<br />
ストリートファイターの二次創作小説を淡々とアップしていくために作成したページです。<br />
同人・二次創作などの言葉がわからない方は、見なかったことにしてこのページを閉じてください。<br />
公式サイドとは一切関係ありません。<br />
<br />
今のところエロ・女性向け表現はありません。<br />
もし増えるときはアナウンスの上、ワンクッション置きますので苦手な方はそれを目安にしていただければ幸いです。<br />
<br />
【好きなキャラ】<br />
ケン・リュウ・春麗の３人組<br />
ガイル・ナッシュ（not腐）<br />
<br />
【好きなCP】<br />
隆拳、拳隆、隆春麗、アレ隆、コディガイ<br />
<br />
【個人的ブクマ】<br />
<a target="_blank" href="http://rodevise.white.icurus.jp/"><img width="200" height="40" border="0" align="left" alt="no_bnr.gif" src="http://masterworks.sakura.ne.jp/link/image/no_bnr.gif" /></a>&nbsp; rodevise｜roccoさん<br />
<br />
<br />
<a target="_blank" href="http://rickar07.blog9.fc2.com/"><img width="200" height="40" border="0" align="left" alt="bnr_rc.jpg" src="http://blog-imgs-37.fc2.com/r/i/c/rickar07/banner.jpg" /></a>　R.C.｜りっかさん<br />
<br />
<br />
<a target="_blank" href="http://zipsright.web.fc2.com/"><img width="200" height="40" border="0" align="left" alt="bnr_z.jpg" src="http://zipsright.web.fc2.com/img/banner.jpg" /></a>　Zips!｜夏原サイケさん<br />
<br />
<br />
<a target="_blank" href="http://mywarm.blog99.fc2.com/"><img width="200" height="40" border="0" align="left" alt="bnr_gj.jpg" src="http://starting-afresh.secret.jp/pict_game/banner_gj.jpg" /></a>　Matador｜Gabrielさん<br />
<br />
<br />
<a target="_blank" href="http://pucha.web.fc2.com/"><img width="200" height="40" border="0" align="left" alt="bnr_b.jpg" src="http://pucha.web.fc2.com/banner.jpg" /></a>　ぼくら路上で吠えるもの｜puchaさん<br />
<br />
<br />
<a target="_blank" href="http://susinfo.blog.shinobi.jp/"><img width="200" height="40" border="0" align="left" alt="bnr_re.gif" src="http://file.susinfo.blog.shinobi.jp/banner.gif" /></a>　Re:set｜yuniさん<br />
<br />
<br />
<a target="_blank" href="http://1ko3.blog53.fc2.com/"><img width="200" height="40" border="0" align="left" alt="bnr_p.gif" src="http://blog-imgs-32.fc2.com/1/k/o/1ko3/banner.gif" /></a>　ピザファット｜１さんさん<br />
<br />
<br />
<a target="_blank" href="http://aviarium.xrea.jp/"><img width="200" height="40" border="0" align="left" alt="bn.gif" src="http://aviarium.xrea.jp/bn.gif" /></a>　aviarium｜黒崎ありゃ太さん<br />
<br />
<br />
<a target="_blank" href="http://teikoku.sakura.ne.jp/enter/"><img width="200" height="40" border="0" align="left" alt="bnr_t.jpg" src="http://teikoku.sakura.ne.jp/bn/dkbn-capcom-1.jpg" /></a>　帝国堂電脳館｜麻倉かれんさん<br />
<br />
<a target="_blank" href="http://drumcanlove.web.fc2.com/index.html"><br />
<img width="200" height="40" border="0" align="left" alt="bnr_d.gif" src="http://drumcanlove.web.fc2.com/link/banner.gif" /></a>　ドラム缶から始まる愛（アイ）。｜イケダさん<br />
<br />
<br />
<a href="http://www15.plala.or.jp/tonbihp/" target="_blank"><img width="200" height="40" border="0" align="left" src="http://masterworks.sakura.ne.jp/link/image/no_bnr.gif" alt="no_bnr.gif" /></a>　<font size="2">とんびのアブラーゲ｜</font>とんびさん<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
【リンクについて】<br />
<img src="http://masterworks.sakura.ne.jp/bnr_ura.jpg" alt="" /><br />
U-Ra｜有利亜裕子<br />
http://f16.atgj.net/<br />
同人サイト様に限りリンク・アンリンクフリー<br />
<br />
<br />
【本　館】<br />
<a href="http://masterworks.sakura.ne.jp" target="_blank"><img src="http://masterworks.sakura.ne.jp/rara_b_1.jpg" alt="" /><br />
R-18<br />
<br />
</a>]]> 
    </content>
    <author>
            <name>No Name Ninja</name>
        </author>
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    <published>2010-07-02T22:47:42+09:00</published> 
    <updated>2010-07-02T22:47:42+09:00</updated> 
    <category term="小説置き場" label="小説置き場" />
    <title>最強の名を持つ者 -前編- （サガット、チット、他）</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<p>登場人物&rarr;サガット、チット、他<br />
コメディ<br />
帝王様があんまりカッコよくないので、そういうのが苦手な方は見ないほうがいいかもしれません&hellip;。<br />
<br />
</p>
<hr />
<br />
【最強の名を持つ者 -前編-】<br />
<br />
<br />
<br />
「&hellip;&hellip;あ」<br />
人間離れした強靭な肉体を持ったその男は、帝王らしからぬ間抜けな声をあげてしまった。<br />
川から汲み上げてきた水の入った巨大な瓶を降ろしたとき、どすんという鈍い音と共に地響きがした。それによって傍に置いてあった朽ちた木製の台が倒れ、干していた大小ふたつの茶碗はあっけなく粉々に砕け散ってしまったのだ。<br />
ただの茶碗なら、驚きはしてもこんな間抜けな声は出さなかっただろう。そのふたつの茶碗は、数日前からチットが作っていたお手製の物だということをサガットは知っていた。素焼きから上がってくるのを少女がどれほど待ちわびていたかも重々知っている。<br />
水を張った田んぼの中で田植えをしていた兄妹は、驚いたように上体を起こして帝王が立っている堤防を見上げた。手伝いに来ていた数人の僧侶の弟子たちも、同じように手を止めている。<br />
まるで世界中の時が止まってしまったように、シンと静まり返った。<br />
「&hellip;&hellip;っ、お、おちゃわん&hellip;！」<br />
はっとしたチットはそう声を上げると、弾かれたように倒れた台へ向かって走り出した。泥に汚れた手足のまま堤防へ上がり、ふたつの茶碗の変わり果てた姿を見てしまうと、全身の力が抜けたようにその場へしゃがみこんだ。<br />
泥色の幼い両手は震え、触れようとしても触れることもできず、がらくたとなってしまった茶碗の破片も拾えずにいる。うずくまった小さな肩は弱々しく震えている。<br />
ちらりと見えた横顔は、虎狩りの密猟者にピストルを突きつけられたあの瞬間に匹敵するほど絶望に満ちていた。茫然と立ち尽くしていた帝王は、途端に呼吸の仕方を忘れてしまう。<br />
少女の名を呼びながら駆けて来たのは、彼女の兄だった。腰を屈めて妹の手元を覗き込むと、事を理解し心配げに隣りへしゃがみこむ。<br />
「チット、もう一回作ればいいだろ、手伝ってやるからさ」<br />
「&hellip;&hellip;もう間に合わないよ」<br />
必死に搾り出された少女の声は、今までに聞いたこともないほど悲壮感が含まれている。サガットは、なにか不可解な手が己の体内に入り込み心臓の一部分を力任せにえぐり取られたような気がした。<br />
「泣くなって！ サガット様に失礼だろ。それにどうせこれはサガット様に&hellip;」<br />
「言わないでって言ったのに！ もういいよ！」<br />
チットは立ち上がると、声を上げて泣きながら走り去ってしまった。少年は一瞬追いかけようとしたけれど、その後姿を見ながら呆れたため息をついた。<br />
「すみません&hellip;サガット様」<br />
お前が謝る必要などない、と言おうとしたが、サガットは喉に蓋ができてしまったように言葉を発することができなかった。<br />
どこまでも続く田園には青空が映り込み息を飲むほど素晴らしい景色が広がっているというのに、その隙間を走っていく少女の背中は痛々しいほどに悲しげだった。
<p>&nbsp;</p>
<p><br />
気が付くと彼はその場へ腰を降ろし、今はもういない少女の残像を追い求めるように田を見下ろしていた。途中まで苗が植えられた田は視界に入っているけれど、ただそちらへ目を向けているだけで実際はなにも見えてはいなかった。<br />
徐々に意識が正常へと戻ると、僧侶の弟子たちは彼から距離を置いたところでたむろし、皆で言い合わせたように顔を蒼くしている。独眼で表情が乏しく感情をほとんど表に出さないものだから、帝王は少女の無礼な行為にご立腹なのだと勝手な勘違いをして震え上がっていた。<br />
少年は、彼を気遣うように無言のまま隣りへ腰掛けていた。僧侶の弟子たちとは打って変わって、呑気な顔つきで小石で不思議な図形を地面に描きながら隣りの帝王が我に返るのを待っていた。<br />
「&hellip;&hellip;チットの好物はなんだ」<br />
「そんなことしなくていいですよ。チットめ&hellip;、帝王様にむかってなんて失礼なやつなんだ」<br />
少年は小さく舌打ちすると握っていた小石を田へ向かって投げつけた。サガットはその小石にすら若干の罪悪感を抱いた。<br />
本当に失礼なのは俺だ、謝罪するべきなのは俺自身なのだ、そう伝えたいがそれをこの少年に言ってなんになる。ただの言い訳でしかないし、それじゃ何故さっき謝らなかったんですかと問われたら益々困惑してしまう。<br />
俺は帝王などではない、俺とて過ちは犯すのだ&hellip;&hellip;。馬鹿馬鹿しい！ あまりにも愚か過ぎる！ こんな愚の骨頂を極めた言い逃れが、純真な子供に通用するとでも思っているのか！<br />
彼の頭の中では幾通りもの次に発しようとする言葉がぐるぐると交差し、腰を降ろしているというのに今にも眩暈で意識が遠のきそうになっていた。<br />
「あー、そういえば」<br />
少年の言葉にサガットは超人的な速さでそちらへ顔を向けた。平和な顔つきをした少年は、田園の先にある山を指差した。<br />
「なんか、あそこの村が気になってるみたいでしたよ」<br />
あんなありふれた山に一体なんの興味が&hellip;&hellip;、そこまで考えて彼はその考えを打ち消した。俺は一体何様のつもりだ！ あの子がどんな山に興味を持とうがあの子の勝手ではないか！<br />
それでしたら私も聞いたことがあります、と僧侶の弟子の中で一番の年長者が話へ加わってきた。<br />
「畑で取れた野菜を、時折運んでいるのを見ました。動物にやっているのかと訊いても教えてはくれず&hellip;&hellip;」<br />
「そういや、あの山に行って帰ってきた人にもやたら様子を訊いてたなぁ」<br />
彼らの話を聞き終わる前に、サガットは立ち上がり山へ向かって歩き出した。虎が出るやもしれぬ、お前たちはここにいろ、と言うと僧侶の弟子は驚いていたが少年は、お気をつけてと陽気に声をかけた。</p>
<p><br />
<br />
鬱蒼と木が覆い茂る山の中は、さきほどまでいた田園よりも薄暗くひんやりとしていた。サガットは当てもなく山道を登ってみたが、チットが興味を示すものがなんなのか検討もつかなかった。<br />
しばらく道成りに進んでいると、崖の木々の間から数匹の狼が鋭い歯を剥き出しにしてこちらをじっと睨んでいた。彼が足を止め見上げると、狼たちは途端に尾を向け走り去った。<br />
あの子はこんな危ないところにひとりで来ていたのか？ 野菜を与えていた風には思えんが&hellip;&hellip;。<br />
徐々に明るくなり道が開けてくると、そこには切り開いた平地が広がり人々が生活していた形跡があった。しかしどこにも人の気配は感じられず、生活感が全くといってない。<br />
狼の群がこの山にいるのであれば、それを狩る虎もまたここに寝床を持っているはずだ。かつては村を形成していたが、それが原因で村人たちはどこか別の山へ移ったか、もしくは山を降りたのだろう。<br />
それでは、何故チットはここへ足を踏み入れる必要があったのだろうか。<br />
空き家になってしまった住居らしき小屋を見て回り、ささやかな畑の残骸を眺めていると、その向こう側の崖に突然黄色い花畑が広がっていた。<br />
花を摘みに来ていたのか？ いや、農作物だけでなく植物すべてに愛情を注いでいるあの子なら、己の都合で根から切り離し花の命を断つことなど望まないはずだ。では一体&hellip;&hellip;。<br />
彼は、むぅ&hellip;と低く静かな唸り声を吐き、どうにか難問を解く糸口を探り当てようと花畑をぼんやりと眺めていた。<br />
「誰かと思えばムエタイの面汚しじゃねーか！ ここが俺様の縄張りと知ってのご訪問か！？」<br />
突然木々の中から声がすると、上空から風を切る音をたてながら彼は現れた。しかし、サガットは微動だもせず難問を解くことに集中している。<br />
「おい元帝王さんよ！ ここに来たからにはどうなるかわかってんだろうな！！」<br />
花でないとすれば、&hellip;&hellip;木か？ しかし薪や木材が必要なら、まず兄と話し合い大人の男に相談するはずだ。俺とて見上げるほどの木だ、小さな子供がどうこうできる代物でもあるまい。そしてなにより周囲の者に隠す必要性がない。<br />
「どうした怖気づいたか？ なぁに、この俺様が相手してやるからには悲鳴を上げる前に殺してやるさ！」<br />
野菜を与える訳でもなく花でもなければ木でもない、他に一体なにがあるというのだ。<br />
むぅ&hellip;&hellip;、帝王と恐れられた俺がこんなにも苦悩させられるとは。俺はあの子に甘すぎるのだろうか。世の中には己の思い通りにならぬことのほうが多く、それは成長するに従って自ずと学び乗り越えていくものだ。<br />
守るだけが帝王の強さではない、ときには障害を乗り越える力を学ばせるためにも、心を鬼にし苦難の道を歩ませる選択も欠いてはならぬ重要なことだ。<br />
いや、しかし&hellip;、あの子は格闘家でもなければ俺の弟子でもない。ただ兄と平穏に暮らしている子供だ。そのようなことを案じている俺が愚かなのだろうか&hellip;&hellip;<br />
「おい！ テメー聞いてんのか！！」<br />
「やかましいわ黙れ！！ タイガーアッパーカット！！」<br />
肩を掴まれた途端に振り返りながら拳を突き出すと、アドンは悲痛な叫びを上げながら倒れた。<br />
サガットが着地すると同時に、鳥たちは驚いたように一斉に飛び立っていく。彼はその存在に初めて気付き、小さな点がいくつも上空を舞っているのを眺めていた。<br />
あの子が興味をひくような珍しい鳥でもいたのだろうか。彼は随分と長い間そこに立って鳥の去った青空を見上げていたが、どのようにすれば小さな鳥を捕獲できるのか検討もつかず、考えることをやめて山を降りて行った。<br />
細い山道の途中で、通常のそれよりもかなり大きな体つきをした虎と出くわした。その足元には先ほど見ただろう狼が、死骸となって転がっている。<br />
彼は虎の前へ立つと、無意識の内に毛並みを確認するように虎の頭を撫でていた。いっそのこと虎の皮を剥いで敷物でも作ってやればどうだろうか。これぐらいの大きさがあれば、兄妹が寝るに十分な尺が取れるだろう。<br />
サガットはそこまで考えてそれを打ち消すように咄嗟に首を振った。いかん&hellip;、あの兄妹は虎に関して忘れがたい過去を今も抱えているはずだ。虎など敷いては安眠など得られるはずもなかろう。<br />
触れた手のひらから何かを察知したのか、虎はまるで気付かれないようこっそりと退き、狼の死骸を銜えて森の中へと消えて行った。<br />
<br />
<br />
-To Be Continued-<br />
<br />
<br />
<br />
&nbsp;</p>]]> 
    </content>
    <author>
            <name>No Name Ninja</name>
        </author>
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    <published>2010-07-02T22:41:33+09:00</published> 
    <updated>2010-07-02T22:41:33+09:00</updated> 
    <category term="小説置き場" label="小説置き場" />
    <title>ぐだぐだレスキュー大作戦 -前編- （ケン、春麗、ガイル、リュウ）</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<p>登場人物&rarr;ケン、春麗、ガイル、リュウ<br />
コメディ<br />
<br />
<br />
&nbsp;</p>
<hr />
<br />
【ぐだぐだレスキュー大作戦 -前編-】<br />
<br />
<br />
ケンは受話器を置くと、目の前に置かれた電話機をしばらく見詰めていた。<br />
世間から隔離された修行時代を終え、社会復帰を果たし、父親から社長椅子を引き継いでそう日が浅いというわけでもないのに、この電話機だけが浮いた存在に思えてならなかった。<br />
軽く拳を落とせば粉々に破壊されるであろうこの精密機械が、自分を事あるごとに一喜一憂させる。受話器から聞こえてくる若干トーンの変化した声に落胆し、些細な報告に希望を抱いて心躍らせ、時にはけたたましく鳴り続ける呼び出し音に苛立ちを感じることさえあった。<br />
山に篭っていた頃はなによりも「気」の扱い方に全神経を集中させ、幼い彼にとっては不可解で難解な修行の末それを見事習得してみせた。だというのに、この目の前の小さな機械は彼の集中力に易々と切り込んでくる。まるで温かなマーガリンにナイフを入れるように。<br />
それを理解するには仕事の要領を覚えるよりも時間がかかった。無機質な物など相手にしたことがないのだから当然といえば当然で、そもそも「集中」や「気」の種類が違うのだ。<br />
やれやれ、とため息交じりに笑いプレジデントチェアに身を沈める。180度回転させると、ガラス張りの向こうに広がる空はどんよりとした雲を敷き詰め申し訳程度の雪を降らせていた。<br />
見慣れた高層ビル群は灰色まで色彩を抑え、ひっそりと身を潜めているように見える。<br />
――楽しいはずのイベントなのにいいアイディアが浮かばない。全くなんてことだ、頭の中まで年くっちまったのか？ 彼は再びため息をつき後ろ髪を掻いた。
<p>&nbsp;</p>
<p>それはほんの20分前、秘書から内線電話が入り彼女は、奥様からお電話です、とだけ告げた。上司というよりも一人の男として彼女の身の上を案じてしまうほど、その秘書は優秀でビジネスライクで無愛想だった。<br />
『姉さんの家に行ってきたの』<br />
その声を聞いた途端、ケンの浮かれていた気持ちは一気に消えうせた。かろうじて、へー、と返事をした自分を褒めたいくらいだ。<br />
『ガイルったらもう三ヶ月も家に帰っていないっていうじゃない。親友の捜索だか仕事だか知らないけど、姉さんやクリスをどれだけ悲しませれば気が済むの！ その上私が怒ったら姉さんなんて言ったと思う？ 彼の気持ちをわかってあげて、ですって！ どこまでお人よしなのよ！』<br />
散弾銃のように続くイライザの話を聞きながら、ケンは今にも笑ってしまいそうで口元をおさえた。妻は今頃受話器を握り締め眉を吊り上げ怒っているに違いない。鮮明に頭に浮かぶその光景は、オフィスで緊張していた彼の気を和ませた。<br />
あらかた話し終えると、彼女は怒りを落ち着かせるように深呼吸をしていた。どうやら弾切れのようだ。ケンはすかさずソフトな口調で切り込む、でないと弾を装填しかねないからだ。<br />
「それで？ なにか用があって電話してきたんだろう？」<br />
『今夜のディナーはキャンセルしたから』<br />
「はぁ！？」<br />
それはあまりに唐突で、ケンは思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。そんなのってあんまりだ、久しぶりに外で待ち合わせをして恋人気分を味わえると楽しみにしていたのに。<br />
『だって、ディナーの前にガイルのバースデープレゼントを選びに行こうってあなた言ってたじゃない。贈る気になんてなれないわ』<br />
「それじゃあさ、ディナーだけにしよう。それならいいだろ？」<br />
『今夜は姉さんの家に泊まるわ。クリスと一緒にケーキを焼くの』<br />
お仕事がんばってね、とだけ言うとその電話は切れた。<br />
ケンは状況をうまく呑み込むことができず、しばらくの間無情な機械音が鳴るそれを耳に押し当てていたが、力なく電話機へ戻した。<br />
この精密機械はなんて無敵な存在なんだと、ケンは大人気なくそれを睨む。<br />
やり場のないこのもやもやとした気持ちを発散するため、電話機を片手で握りそのまま粉砕してしまうことなどあくびをしながらでもできることだが、そんなことをすれば優秀な秘書が飛んできて、ビジネスライクに交換の指示を該当部署へ出し、部屋の外では冷静に、と無愛想に忠告されるのだ。妻とはケンカをしたわけじゃないんだ、と言い訳ぐらいさせてくれてもいいのに、とケンは思う。<br />
立ち上がってプレジデントデスクの前方にある応接セットへ移動すると、ソファーへ腰掛け身体を倒して横になった。<br />
こんなときあいつならどうするだろう&hellip;&hellip;。ケンは親友の顔を思い浮かべ、見当違いな自分の考えに自嘲的に笑った。<br />
どうするもくそもないだろう、あいつはこんな状況に出くわしたことがないんだから。<br />
リュウと共に生活をしていたとき、なにかの機会があって常識的な問題に直面すると彼は決まって困り果てた目を向けケンに助けを求めた。一般常識が壊滅的に欠落している彼にとって、隣りに立っている親友はどうにかしてくれる存在であり、実際ケン自身も要領のいい立ち回りでどうにかしてきた。<br />
それに彼は、ファイターではない女性をどう扱っていいのか全くわからないようだった。思いつきで六ヶ月の修行旅行へ出かけたとき、イライザは一緒に帰国したリュウを涙ながらに責め立て彼をほとほと困らせたことがあった。どうやら彼女は、リュウが彼を連れまわし修行漬けの生活に引きずり込もうとしていると勘違いしたらしい。そのときのリュウも、苦笑いを浮かべてケンに助けを求めていた。<br />
数分前、電話の向こう側で声を荒げていたイライザの気持ちは理解できる。だがしかし、ガイルのとった行動もケンにとっては正解以外のなにものでもない。もしも自分が全く同じ状況に置かれたとしたら、なにも迷うことなく全てを捨てる覚悟で旅立っただろう。法的にとか軍人的にとかそんな難しいことは関係なしに、彼の判断は正しいと思う。ただ恐ろしく要領が悪いだけなのだ。<br />
――だからって俺たちのデートを阻止する権利はないだろう。ケンは八つ当たりのため息をついた。</p>
<p>ぼんやりと天井を眺めていると、携帯電話がワンコールだけ鳴った。上着の胸ポケットから出して確認すると、それは旧友からのメールだった。<br />
『こちらでの仕事が片付きそう。明後日以降に観光をしたいわ。香港に来たときだって付き合ってあげたんだから、今度はあなたの番よ』<br />
ケンはすぐに電話帳の『Ｃ』欄を呼び出し電話をかけた。予想通り彼女はすぐに出た。<br />
「久しぶりだな春麗、こっちに来てたんならもっと早くに電話してくりゃよかったのに」<br />
『なに言ってるのよ、お互い暇じゃないでしょ』<br />
そりゃそうだ、とケンは笑う。旧友たちの声はどれも同じ懐かしさを含んでいる。一瞬にして幼く未熟だった修行時代の自分へ戻してくれる。<br />
彼は一瞬、彼女を今夜のディナーに誘おうかと思ったけれどやはりやめておいた。なんだか春麗にもイライザにも失礼な行為に思えた。彼女も彼と同じように上流家庭で育ったけれど、春麗とはホットドッグとコークを買って公園のベンチへ座った方が話がはずみそうな気がした。<br />
「なぁ春麗、ガイルってなにを貰えば喜ぶと思う？」<br />
今週末が彼の誕生日なんだ、と付け加えると彼女はくすくす笑った。<br />
『さぁ、なにも思いつかないけど。パーティーでも開いてあげれば？』<br />
「仏頂面になるに決まってるだろ」<br />
『あら、いつも仏頂面じゃない』<br />
そう言うと互いに同じ顔を思い出したらしく、同時に噴き出して笑った。ひとしきり笑うと、そうねぇ、と考え込むようにつぶやいた。<br />
『なんにしても彼には休暇が必要だわ。家へ帰ればご家族も喜ぶし、その姿を見て彼も心が休まるんじゃないかしら』<br />
「イライザも外泊しなくなる」<br />
『なんのこと？』<br />
「なんでもない」<br />
ともかく、と彼女は続けた。<br />
『せっかく休暇が取れたんだから観光よろしくね』<br />
「ガイルに頼めよ、俺だって忙しいんだぞ」<br />
『彼にも同じこと言われたわ、ケンに頼めって。そういえばあんたの話したら、えらくご機嫌ななめになってたわよ』<br />
いつものことだろ、と口をはさんだけれど春麗はそれを無視した。<br />
『どうも娘さんが、あんたのポスター見てかっこいいって騒いでたらしいわよ。ガイルはそれに腹を立てているとは絶対に認めなかったけどね』<br />
そう言うと、彼女は面白がるようにくすくす笑う。ケンはソファーに寝転がったままネクタイを緩め右腕を上げて上着とシャツの袖を下ろすと、腕時計でささやかな休憩時間の残りを確認した。<br />
先週か先々週かに妻から聞いた話を思い出す。父親の代から付き合いのあるメンズスーツを専門とするアパレル企業からオファーを受け、ケンは半年間のモデル契約を結んだ。まるでどこかのパーティーにでも出かけるような完璧なコーディネイトは、幼いクリスには物珍しく眩く映ったのだろう。すごい！ かっこいい！ を繰り返していたとイライザが楽しそうに話してくれた。<br />
ケンは、やれやれ、ともう何度目になるかわからないため息をつく。<br />
そんなことで怒るのなら、クリスマス休暇でも取ってクリスに自分のスーツ姿を見せてやればいいじゃないか。スーツなんてもの、ガキの俺よりもあいつの方がよっぽど似合うだろうし、あんなチャラチャラした格好と比べたら軍服のほうが数倍クールだ。<br />
『観光ならあんたに頼んだほうがどこでも顔パスで通りそうじゃない。なんたってマスターズの社長さんなんだから』<br />
「おいおい、刑事が職権乱用を推奨するなよ」<br />
『足手まといなＳＰなんか連れてこないでよ。社長さんが誘拐されそうになったら私が守ってあげるわ』<br />
「冗談言うな、俺がお前を護衛してやるよ」<br />
やはり彼女はレストランに誘うべき相手ではない、とケンは改めて思った。観光の後公園へ行き、一試合してからベンチでホットドッグを食べるべきだ。そのとき一体どちらが、マスタードソースが染みると顔をしかめることになるだろう。<br />
ＳＰねぇ&hellip;&hellip;、ぼんやりとそれについて考えていると、彼の頭の中で散らばっていた点が瞬く間に一直線に繋がり、まるで寝坊した朝のように腹筋と背筋で飛び起きた。<br />
「それだ！」<br />
『どれよ？』<br />
春麗の呆れた声は、もうすでにケンの耳には届いていなかった。</p>
<p>&nbsp;</p>
<p>腕が燃えている、とガイル少佐は己の左腕をじっと見ていた。<br />
実際のところ皮膚が焼け焦げている訳ではない、汗をも蒸発してしまいそうなほど高熱を発しているのだ。垂らしている右手も合わせて拳を握ったり開いたりして具合を確かめる。正常だ、全く問題ない。<br />
上腕二頭筋から指先までの筋肉が激しく収縮を繰り返し、心臓は忙しなく血液を送り込んでいる。急激に体温が上がったことに身体は驚き、大急ぎで熱を発散させようと汗を噴出し、その代償として若干の寒気を感じる。<br />
ガイルはグラウンドの中央から休憩用のベンチへ向かうと、飲みかけのミネラルウォーターを左腕にかけ、二、三口飲むと残りを頭からかけた。固い頭髪に残った水気を指で払い、清潔なタオルで顔や頭や肩を拭うと幾分かすっきりとした気分になれた。<br />
ズボンのポケットにしまっておいた支給品の腕時計を左腕に巻くと、デジタル数字は午後二時を表示している。そろそろトレーニングを引き上げ、デスクに貯まった書類を片付ける頃合だ。<br />
シャワーを浴びて一息つくのはその後だ、そんな些細な楽しみでも取っとかないとデスクワークなんてやっていられない。<br />
タオルを肩にかけたまま執務室へ向かっていると、部屋の前ですれ違った同僚が冷やかすようににたにたと笑って去って行った。不思議に思ったが彼は追いかけはしなかった。そういうことはティーンエイジャーのときに嫌というほどやりつくしたからだ。<br />
ドアを開けるとガイルは一瞬たじろき、そしてすぐにいつもの無表情に戻った。<br />
「おかえりなさい」<br />
自分が座るべきデスクの向こう側には、私服の春麗が座っていた。コバルトブルーのチャイナドレスにダークブラウンのストッキング、白い編み上げブーツ。にたにたと笑っていたのはこのことかと、彼は呆れたため息をつく。<br />
彼女を知らないここの人間からすれば、共に捜査をしていた捜査官の女の子がめかし込んで訪ねて来たように見えるのだろうが、ガイルからすれば臨戦態勢に入っているようにしか見えない。ブレザーの制服姿の方がどれだけ優しく見えることか。<br />
「こんなむさ苦しいところへ来るもんじゃないぜ、お嬢さん」<br />
「シャンプーの香りがする軍人が、どこかの国にはいるとでも思ってるの？」<br />
「今の発言は差別的だぞ」<br />
「あなたが先に言ったんじゃない」<br />
ガイルは口をつぐみ、諦めとも譲歩とも取れない沈黙に徹した。春麗はデスクに両肘をついて機嫌よさげに微笑んでいたが、彼の無反応に飽きてしまうと立ち上がってドアへ歩み寄った。<br />
「あなたに頼みたいことがあるの。これは極秘で非公式なことよ」<br />
彼が開けっ放しにしていたドアを閉め、隣りの窓のブラインドを降ろし、室内が外部から見えないよう完全に遮断すると春麗は元いた席へと戻った。<br />
しかし彼女は腰を降ろす前に固まってしまった。つい今しがた自分が閉めたはずのドアとブラインドは、ガイルによって元通りに開けっ放しにされていたのだ。<br />
なにするのよ、とでも言いたげに睨んでも、彼はいつもと変わらぬ仏頂面で立っている。春麗は怒りをアピールするようにデスクの天板を叩くと、大股で彼の元へ行き横を通り抜けてドアを荒っぽく閉めた。ブラインドを降ろそうとすると、ガイルはそれよりも先にその窓を全開にした。廊下を通りかかった軍服の男が、不思議そうに彼らを見て去って行った。<br />
ガイルは再びドアを開け放つと、それと窓の間にある柱にもたれて腕を組み無表情のまま彼女を見下ろしていた。まるで、この執務室での主導権は全て俺にある、と宣言するように。<br />
「極秘だって言ったでしょ？ 人に聞かれたくないのよ」<br />
春麗が抑えつつも苛立った声でそう言うと、ガイルは腕組みをしたままちらりと廊下を振り返った。<br />
「&hellip;&hellip;何故そんな目立つ格好でここに来たんだ」<br />
そう言った彼の意図が掴めず、春麗はじっとガイルを睨んだ。<br />
「親父さんの事もいいが、君はもっと自分自身に気を配るべきだ。いいか春麗、俺はお前さんのことを志を同じくする者として信頼しているが、シャドルーを知らない端の者から見ればただの男と女にしか見えないんだ。俺はここで事実とは違う噂をたてられようがどうってことはない。言いたい奴には好きなだけ言わせておけばいいし、ユリアの耳に入っても、そんな度胸のある男じゃないと一笑に付されて終わりさ。しかし君は立場が違う。インターポールの捜査官として誰もが認める結果を出しているが、若い女が力を発揮しようとするなら男以上に隙を見せるべきではない。任務先での色恋沙汰なんて噂を上司に密告されたら、間違いなくお前さんの足枷になる」<br />
「出世になんて興味ない」<br />
「気が合うな。しかしわざわざ自分の立場を悪くする必要性はないはずだ」<br />
「それに、私のボスはそんな噂を鵜呑みにするほど低脳な人じゃないわ」<br />
「男の思考回路はそこまでクリーンにはできちゃいないのさ」<br />
なんにしても、と彼は強引に続けた。<br />
「年上の忠告は素直に聞いておくべきだ。ここにナッシュがいたら、俺より先に同じことを言ったはずだ」<br />
ガイルが話し終わると、開放された執務室はしんと静まり返った。春麗は無表情の彼を茫然と見上げていたけれど、目を伏せ小さくため息をついた。<br />
卑怯だ、と春麗は思う。ガイルが言うように春麗もまた、彼に対し志を同じくする者として共に戦えることを誇りに思い、心強くも思っている。その彼が、親友のナッシュを探し出すためどれだけのものを捨ててきたか嫌というほど傍で見てきた。そのガイルの口から『ナッシュ』の名前を出されると、彼の言い分に若干の矛盾があっても春麗はもう何も言えなくなってしまう。<br />
だからこそ、とも彼女は思う。だからこそ春麗はここへ来たのだ。<br />
ガイルは居心地の悪い雰囲気を仕切りなおすように咳払いをすると、デスクの前へ無造作に置いていたパイプ椅子へ腰掛けた。<br />
「極秘で非公式とやらの話を聞こう。電話で済まさずわざわざここへ出向いたということは、記録に残されたくなかったんだろう？」<br />
「ええ&hellip;そうね、米軍にこんな記録残されちゃ困るわ」<br />
そう言った春麗の顔が一瞬引きつったように見えた。彼女はこの部屋の外部からの遮断を諦めると、ガイルの正面へ回りデスクの端へ軽く腰掛けた。<br />
「実はね、誘拐事件があったとイライザから連絡をもらったの」<br />
イライザ&hellip;？ 誘拐事件？ 一体なんのことだ？ ガイルは予想もしなかった話に混乱してしまい、春麗の言葉を上手く理解することができなかった。彼女はそんなことにはお構いなしに、まるでガイルが既に知っている事のように話を進める。<br />
「会社のこともあるから表沙汰にはしたくないみたい。できれば私とあなたで解決して欲しいようだったわ。<br />
まぁ資産家のおぼっちゃんなんだから子供の頃から誘拐の危機には晒されてきただろうけど、犯人も馬鹿ならあっさり掴まるあいつも馬鹿よね」<br />
「お、おい&hellip;&hellip;まさかとは思うがその馬鹿ってのは&hellip;」<br />
「イライザは警察には知らせないでくれって言ってたけど、私が刑事ってこと忘れてるのかしら」<br />
「&hellip;&hellip;ちょっと待ってくれ」<br />
「私ってそんなに刑事には見えないのかしら。ねぇ、どう思う？」<br />
「そんなことはどうだっていい！」<br />
ガイルは話を遮るように声を荒げて立ち上がった。一呼吸置いてパイプ椅子がガタンと倒れる音がした。あまりに突拍子もなく思考が追いつかないというのに、彼女はどんどん話を進め呑気に脇道へ逸れていく。立ち上がった彼は驚きのあまり上手い言葉が見つからず、しばらくの間春麗を凝視していた。<br />
「誘拐されたってのは&hellip;&hellip;ケンのことか？」<br />
そう言うと、春麗は何を今更、という顔で彼を見上げた。<br />
「あら、言ってなかったかしら。資産家の息子でイライザの旦那で馬鹿っていったらあいつしかいないでしょ」<br />
「あ、ああ&hellip;&hellip;」<br />
いまだ混乱しているガイルはそのまま腰を降ろしてしまい、しりもちをついて倒れたパイプ椅子で背中を強打した。なにしてるのよ、と春麗に笑われても耳に入っていないのかガイルは、なにやってんだあいつは&hellip;、と呟いている。彼は起き上がるとパイプ椅子を元の位置に戻し、そこへ座りなおした。社長に就任したとはいえケンは『全米格闘王』と謳われた男だぞ&hellip;&hellip;、金目当てか怨恨か知らんがそれをあっさり誘拐するなんて&hellip;&hellip;。<br />
「まさかっ&hellip;&hellip;シャドルーが」<br />
「それはない。絶対にない」<br />
春麗はいやにはっきりとした口調でそう言った。何故断言できるのかその理由が知りたくて、ガイルは黙って続きを待った。手に取るように、とまではいかないにしても長年の付き合いで互いの思考パターンは把握している。彼女は根拠もなしに物事を決め付けたりしない。ことさらシャドルーに関しては特に。春麗はその期待に答えるように口を開いた。<br />
「ケンの家の電話は、携帯電話を除いて全ての回線を常に逆探知しているらしいの。そこから割り出した犯人の居所は、マスターズが運営するトレーニング施設だった。犯人の言葉を信じるならケンはそこにいるわ。その施設は今日は休館日で、出入りできるのはマスターズ関係者のみ、ということから金銭目的の内部の犯行じゃないかと私は予想しているの」<br />
「部下に誘拐されたってことか。立派な社長さんだぜまったく&hellip;&hellip;」<br />
呆れたため息をつく彼に、春麗はなおも続けた。<br />
「身代金はたったの300万ドルだし、48時間後には施設を爆破すると脅してきているけれど、なんとなく釈然としないのよね」<br />
「ケンの生死もあるが、まぁ爆破するなら本社ビルでも狙ったほうが脅しの威力はでかいだろうな。そんなお飾りみたいなトレーニング施設、爆破されても経営が傾くほど損害になるとは思えん」<br />
「でしょう？ 金額といい施設といい、シャドルーがそんな小物じみたことするかしら」<br />
オーケー、と立ち上がると、ガイルは肩にかけていたタオルを結びデスクへ投げた。<br />
「とりあえずその施設へ向かおう」<br />
「協力してくれるのね？」<br />
春麗がそう言って駆け寄ると、彼は口の端を上げ少しだけ笑った。<br />
「あの馬鹿は自業自得だと思うが、イライザとユリアに結託して責められるのかと思うと夜も眠れないんでね」</p>
<p><br />
-To Be Continued-<br />
&nbsp;</p>
<br />]]> 
    </content>
    <author>
            <name>No Name Ninja</name>
        </author>
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    <published>2010-07-02T22:18:11+09:00</published> 
    <updated>2010-07-02T22:18:11+09:00</updated> 
    <category term="小説置き場" label="小説置き場" />
    <title>15年と10ヶ月（リュウ、ケン、他）</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[登場人物&rarr;リュウ、ケン、他<br />
シリアス<br />
<br />
※注　意※<br />
かなりの捏造が入っている小説ですので「二次創作は基本的になんでもあり」と思える方だけ進んでいただけると幸いです。読後の苦情は、真摯に受け止めさせていただきますがお返事をすることは控えさせていただきます。エロ・グロ・暴力的・女性向け表現は一切ありません。<br />
<br />
なにはともあれ、登場人物の微妙な関係性が好きで好きで仕方ありません。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<hr />
<br />
【15年と10ヶ月】<br />
<br />
<br />
リュウの目の前には、黒髪の少年が立っていた。<br />
早朝から灰色の雲を敷き詰めていた空はどんよりとした重みのある空に変わり、この山全体に針のような雨を降らせている。目には見えないが油断していると衣服や髪をじっとりと濡らし、知らぬ間に体温を奪っていくやっかいな雨だ。<br />
少年の目を見てリュウは即座に事を理解した。ああ、彼は俺を探しにこんな山奥へ来たのだと。<br />
そしてとても不思議に思う、何故そんなに眉を歪ませこちらを睨んでいるのかと。<br />
リュウがストリートから消えてもう10年以上が経つ。ただ強さを追い求め、真の強さの意味を探求し、その結果彼は鬼と対峙することを選んだ。鬼との対峙は自分自身との対峙でもあり、言葉では言い表せない彼自身にも説明のできない答えを残していった。修行を続ける中で、彼は己よりも強い者と闘うのではなく自分自身と向き合い対峙し続けることの重要性を感じた。リュウはある一定のラインを超えてしまったのだ。<br />
彼はなんの迷いもなく修行時代にすごした山奥の寺へ戻ってきた。すぐ目の前には師の墓がある。自分が食べる分だけの白米を炊くと、なによりも先に欠けた猪口へそれを盛り墓前へ供えて師へ語りかけた。<br />
短い会話が終わるとリュウはその猪口を地面へ置いて去っていく。どこからともなくやってきた狐や狸が焚きたての飯を素早い動きで持ち去り、羽音をたてながら舞い降りた野鳥が残りをついばみ、石や枯れ葉の裏側からやってきた虫が猪口にへばりついた米粒をきれいに持ち去っていった。日が暮れる頃には猪口は空になり、リュウはそれを見るたびこの山に生かされていることを感謝した。<br />
山に入った当初は一ヶ月も空かない内に、次々と来訪者が現れた。ストリートで闘う者なら誰もがリュウの名をどこかで聞く。その彼がストリートから去ったのだ。彼を倒すことを目標としていた者たちはどうにか情報をかき集め、この山奥へたどり着く。<br />
リュウはいついかなるときも誠意をもって闘った。相手が本気であればあるほど、全ての力を出し切り勝利する。ここで自分が負けてしまっては、相手の歩を止めてしまうことになるからだ。<br />
年を追うごとに挑戦者の数は減っていった。どこかの誰かが『たいしたことなかった』と話したのかもしれない。まぁそれでもいい、力を誇示したいわけでも世にしらしめたいわけでもない。<br />
もう自分の歳を数えることを忘れてしまったが、40代の中頃はとうに過ぎている。黒い頭髪には白いものが混じり始め、川に映った自分の顔には生まれつきそこにあったような皺が刻まれ、鍛え上げた筋肉とは全く別のところで身体の衰えを感じる。<br />
仮にだれかが本当に『たいしたことなかった』と言ったのなら、それは事実なのかもしれない、と彼は思う。それと同時に、これが生きているという証なのだと嬉しくも思った。<br />
「リュウさん&hellip;&hellip;ですよね」<br />
少年は緊張を必死に押し殺すような声でそう言った。リュウはただ何も言わずうなづいた。肌や瞳の色、骨格といい明らかにアジア系に見えるのに彼は意外にも流暢な英語を話した。<br />
今までここへ来た者たちは皆、言い合わせたようにリュウの姿を見ると期待に満ち溢れた目をした。やっと見つけたと歓喜の声を上げる者さえいた。<br />
<br />
しかし今目の前に立っている少年はどこか怯えるような目をし、そして奇妙に眉を歪ませリュウを睨んでいる。<br />
<br />
彼が雨に濡れたネイビーのウインドブルゾンを脱ぐと、その下には白い胴着が見えた。少年は強張った面持ちで前の合せ目を正し、黒い帯の締め具合を確認する。<br />
「僕と、手合わせしてもらえますか」<br />
待ってくれ、と声をかけるとリュウは着物の胸元へ右手を入れた。<br />
「これがないと、どうも本気が出せないんだ」<br />
言葉とは裏腹に柔らかな口調でそう言うと、リュウは赤い鉢巻を締めた。<br />
<br />
<br />
<br />
雨はいつしか本降りになっていた。リュウの着ている古い着物と少年の着ている白い胴着は雨をたっぷり吸い込み、四肢を拘束するように重みを増している。<br />
緊張し怯えた目をしていた少年は、打って変わって力で押し切るような強気な攻撃をしかけてきた。リュウはそれを軽い身のこなしで流し、腕や時には腿で攻撃を制御しながら少年の力量を観察していた。<br />
少年といっても、格闘家と名乗って差し支えのない技を持っている。未完成ながらに身体も鍛えられ、特に足技に威力がある。利き足での攻撃を真正面から受けると、さすがのリュウでも身体の重点をずらされるほどだった。<br />
この山奥で戦ってきた者たちは、誰もがリュウの格闘パターンや癖を把握していた。彼は今まで世界中で闘ってきたのだ、研究しようと思えばいくらでも研究し対策することができる。<br />
しかし少年はそれらとは明らかに一線を画していた。<br />
リュウの動きを把握しているなんてものじゃない、まるで予知能力でも持っているかのように全て先回りして攻撃をしかけてくる。惜しむらくは、技のひとつひとつが結晶化されておらず決定的なダメージに至らないことだった。<br />
まるで俺と闘うために育てられたみたいだ、とリュウは思う。対峙しているのが俺だからこんな攻撃をしかけてくるんじゃない、こういう動きが身体に染み付いているのだ。<br />
リュウはあえてストリートにいた頃の闘い方をした。攻撃・防御・思考パターン、どれをとっても少年は当時のリュウと闘っていることを悟ったからだ。少年の周囲には、細かな粒子のように懐かしさが漂っていた。<br />
彼は思わず、ふっと笑う。この少年は話しかけてきたときからずっと何かを隠している。いや、隠すように教育されたと言ったほうがしっくりくる。しかもそれは強制されたものではなく、少年自身がそう望んでいるようだ。それ故少年はいまだ全力を出し切れてはいない。そのきっかけを与えるために、リュウは手元で両手を合わせ気を練り始めた。<br />
少年の両手がぴくりと動く。見落としてしまいそうなほど一瞬だけその両手がリュウを真似たように見えたが、少年は即座に上空へ飛びリュウの鎖骨めがけて強烈な蹴りを入れて波動を打ち消した。<br />
バランスを崩した彼の足元へ着地するやいなや、少年は地に着きそうなほど低い位置からのアッパーカットを繰り出そうとしている。こちらを見据える少年の目が、勝利を期待したものに変わっている。<br />
リュウは全てを確信し、動くことをやめてしまった。この感覚をなんというのだろうか、喜び、懐かしさ、記憶に刻まれた強烈な打撃に対する若干の恐怖&hellip;&hellip;<br />
少年の右拳が天を向いたとき、それは突然驚いたようにびくりと震えて停止した。彼の目の色はもう既に正常へと戻り、次第に驚愕から失望の色へと変わっていく。<br />
リュウは無意識の内にその右腕を掴んでいた。<br />
「ケンは元気か？」<br />
「え&hellip;&hellip;？」<br />
知らぬ間に雨は上がっていた。彼らの周囲には真新しい日の光が射し、先ほどまでの大雨が嘘だったように静寂に包まれている。まるで彼の言葉を少年の耳に届かせることを、天が望んでいるように。<br />
少年は驚愕していたが、自分自身に絶望したように顔を歪ませた。リュウは掴んでいた腕を離し、すまない、と頭を下げた。少年はもうどうしようもないほど戦闘意欲を無くしていた。<br />
「水を差すつもりはなかったんだ。その&hellip;&hellip;口を突いて出てしまった」<br />
「どうして&hellip;&hellip;どうしてバレたんですか？ 必死に隠していたのに」<br />
「俺ぐらいあいつの昇龍拳を喰らってるのは、ほかにいないからな」<br />
そう言うと、少年は恥ずかしそうに真っ赤な顔をしてうつむいた。<br />
<br />
<br />
<br />
リュウは雨戸を開けっ放しにしていた縁側へ腰を降ろすと、少年へ隣りに座るよう促した。縁側は先ほどの大雨でところどころ濡れている。少年は茫然と立ち尽くし、ここへ来たときと同じように眉を歪ませ、うつむき気味に縁側を睨んでいた。<br />
「ああ、すまない。今なにか拭く物を」<br />
「いえっ、いいんです！ そういう意味じゃありませんから」<br />
少年は立ち上がろうとしたリュウを咄嗟に止め隣りへ座った。その横顔はもう既に礼儀正しい子供のものに変わっている。リュウは不思議に思ってその横顔を見ていた。最初に対面したときもそうだった、彼は何故そんなにも眉を歪ませ睨むのだろうか&hellip;&hellip;<br />
「すいません、ちょっと驚いてしまって。こんな風にあなたと話をするときがくるなんて、思ってもいなくて&hellip;&hellip;」<br />
目上の、名の通った者に対する緊張か？ いや違う&hellip;&hellip;その答えを当てはめるには違和感がある。<br />
「それは買いかぶり過ぎだ。君の先生のほうがよっぽど有名人じゃないか」<br />
「でも、ケンさんはいつもあなたの存在を感じていました」<br />
リュウを見詰める少年の目は、相手を揺るがすほどの強い力を持っていた。<br />
「いつ会っても強くて、仕事で忙しいだろうに僕なんかよりもずっと鍛錬を積んでいます&hellip;&hellip;、もう十分すぎるほど頂点に立ってるっていうのに新しい技まで研究してる。ライバルとの決着がまだついていないんだって&hellip;&hellip;」<br />
「そうか&hellip;&hellip;、あいつらしい」<br />
少年の深いブラウンの瞳を見ていると、リュウは別の疑問を抱いた。<br />
もう何年も前にアメリカへ渡ったとき、ケンは弟子が押しかけてきてほとほと困っていると言っていた。ショーンのほかに弟子を取ったなんて話、聞いたこともなかったが&hellip;&hellip;<br />
「君はもしかして、ケンの&hellip;&hellip;」<br />
「あ、いえ、僕はケンさんの息子ではありません。この髪も生まれつきです、染めてるわけじゃありません」<br />
少年は慣れた口調でそう言った。それはずっと昔から準備していた言葉を、手際よく出してきたように思えた。きっと彼は今まで何百回とその質問を受け、何百回とその回答をしてきたのだろう。<br />
「よく間違われるようだな」<br />
「ええ&hellip;&hellip;どうしてでしょうね、僕は見るからに生粋のアジア系なのに」<br />
「君と闘った者は皆、そう思うさ」<br />
リュウは晴れ渡る空を見上げ、庭へ降り立った雀の姿に目をやった。<br />
「いい師匠を持ったな。まだまだ荒削りだが、持てるもの全てを伝えられているのがわかる」<br />
あいつにしては珍しい、とリュウは心の中で続けた。<br />
「君は今よりももっともっと強くなる。俺もケンも、もうひとりの師匠も、いずれは君に倒されるときが来るだろう」<br />
その言葉に少年は絶句し目を見開いた。そしてまた、あの表情だ。眉を歪ませ不思議な感情を含みこちらを睨む。<br />
「見事な足技だった」<br />
そう言うと、少年の険しい表情はみるみるうちに崩れていき、顔をくしゃくしゃにして泣き出した。<br />
少年が受け継いだ技はどれも、リュウの記憶の中に残る親友と同じように攻撃的で力強く、受ける者に強烈なインパクトを残す。この少年が本当に隠したかったのは、もっと別のなにかだ。<br />
腰を屈め、両手で口元を覆い、膝の上へ顔を埋めて少年は声を押し殺し泣いている。ああ、やっとわかった。この少年は今にも泣き出しそうなのを、きつく睨むことでじっと耐え続けていたのだ。<br />
リュウはなにも言わず、彼の震える背中を見詰めていた。闘いの中で感じたことが正しければ、自分にはこれ以上声をかける権利などないのだと悟った。<br />
<br />
<br />
<br />
少年が山を降りた頃、タイミングを見計らったように電話のベルが鳴った。リュウはしばらくそれが耳に届かず少年が去って行った小道を見詰めていたが、立ち上がって部屋の奥へと進んだ。<br />
「弟子はもう帰ったぞ」<br />
リュウは受話器を取るなり開口一番にそう言った。老朽化したこの寺にはあまりに不釣合いな電話機は、連絡手段くらい確保しろ、と親友が半ば強引に手配した物だった。<br />
『へぇ、遅くまで居たんだな、手こずったのか？』<br />
電話口の向こうから聞こえてくる彼の声には、期待と少しの冷やかしめいたものが含まれている。リュウは片手で鉢巻を解きながら、短いため息をついた。<br />
「いや、俺が中断させてしまった。ついさっきまで話をしていたんだ」<br />
そう言うと、ケンは突然無言になった。まるで受話器を通して重苦しい沈黙が流れ込んでくるようだ。おい、とこちらから声をかけると、聞こえてるよ、と返事があった。<br />
『それで？ どうだった？』<br />
「よくあそこまで教えこんだな、まるで子供の頃のお前と闘っているようだった」<br />
『馬鹿言え、俺よりもあいつの方が上だ』<br />
「意外だな、俺の方が上だと言うかと思ったんだが」<br />
『可愛がってるんでね』<br />
そうか、とリュウは自分にも聞こえないほど小さな声で呟いた。<br />
「彼には申し訳ないことをしてしまった」<br />
『ん？』<br />
「なんの土産も持たせてやれなかった。波動拳を打とうとしたらうまく蹴散らされた」<br />
ケンは得意げに、ふふ、と笑う。まるで、期待通りだと言わんばかりに。<br />
「彼がそっちへ戻ったら、すまなかったと伝えてくれないか」<br />
『ああ、一応伝えておくよ』<br />
それから&hellip;&hellip;、と言ったっきりリュウは黙りこくった。ケンは何も言わず続きを待っている、まるで海を越えて遠く離れたリュウの今の姿も、表情も、心の内もわかっているかのようだった。<br />
「彼女に、ありがとう、と伝えてくれ。とても感謝しているんだ、俺は今日のこの日を一生忘れることができないだろう」<br />
受話器の向こう側は、再び固まったように静かになった。随分と経ってから、ばかやろう、とかすれた声が聞こえた。<br />
『&hellip;&hellip;どいつもこいつも、俺を頼りやがって』<br />
「すまないと思ってる」<br />
一度だけ、鼻をすする音が聞こえた。<br />
『あいつと闘ってどうだった』<br />
「とても強かったよ」<br />
『そうか&hellip;&hellip;、それだけで十分だ』<br />
そして電話は切れた。<br />
縁側へ目をやると、真っ赤な夕日が空を燃やしながら山の稜線へと消えていくところだった。<br />
夕日はここを去った少年の白い胴着を、燃えるような炎の色に染めているのだろうか。リュウは手の中の赤い鉢巻に視線を落とす。それとも、もう既にこれから訪れる闇の色に染まり始めているのだろうか。<br />
少年は逃れられない宿命として闇と対峙することになるだろう。リュウは、彼にはなんの助言もできないのだと己に言い聞かせ、果てしなく先にある運命にこれから挑戦しなければならない少年にかすかな羨望を抱いた。<br />
共に育った親友も同じことを感じたりしたのだろうか&hellip;&hellip;。リュウは握りっぱなしだった受話器を見詰め、電話機へ戻すと縁側へ腰掛け、闇が空を覆ってしまうまでそれを見届けていた。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
15年と10ヶ月前、ケンのオフィスに彼女は現れた。<br />
自宅ではなく何故ここへ来たのかケンは不思議に思ったが、彼女の険しく思いつめたような表情を見て何も言えなくなっていた。ソファーへ座った彼女は、自分よりも大切なものを扱うように己の腹部を撫でている。<br />
あなたもよく知っている男よ。その一言にケンは酷く混乱してしまった。<br />
「そんな&hellip;&hellip;、まさか&hellip;」<br />
「勘違いしないで。無理矢理なんかじゃない、ただ&hellip;&hellip;欲望ではなく本能だったのよ」<br />
彼女は自分自身に言い聞かせるように呟く。それでも、その表情はいまだ晴れないままだ。<br />
「人間の、いえ&hellip;、生きる物として子孫を残そうとする、ただシンプルな本能だったのよ。私の母性がそれに応えただけ、とてもシンプルでしょ」<br />
「シンプルってお前&hellip;&hellip;」<br />
張り詰めた空気の中、控えめなノックの音がすると盆を持った秘書が部屋へ入って来た。ケンは急いで立ち上がると、今はふたりだけにしてくれ、とその秘書を追い出した。広いオフィスの中は再びシンと静まり返った。<br />
「そんな傷付いたような顔しないでよ」<br />
「無茶なこと言うな&hellip;&hellip;、誰だって驚くさ」<br />
「簡単なことよ、本能で子孫を残し、母親がそれを育む。それ以上になにがあるっていうの？」<br />
「&hellip;&hellip;お前、本気で言ってんのか？」<br />
「本気よ。思い悩むことなんてなにもないじゃない&hellip;」<br />
ケンはその言葉を遮るようにテーブルを叩いた。拳が触れたところから、ぴしぴしとヒビが広がっていった。<br />
「ばかやろう！ なにが本気だ！ 命のどこがシンプルで簡単だって言うんだ！」<br />
そう声を荒げられると、彼女は眉を歪ませきつく彼を睨んだ。<br />
「お前が今抱えているものはな、今までの人生で味わってきた悲しみなんて一瞬で吹き飛んじまうようなものなんだぞ！ それを母親のお前が軽く扱ってどうすんだよ！」<br />
「男のあんたに私の何がわかるって言うのよ！」<br />
「だったらそうやって睨んで泣くの我慢すんのやめろよ！」<br />
彼女は一瞬驚いたように目を見開く。それでも尚眉を歪ませきつく睨み、どうしようもなく震える下口唇を噛締める。ケンは敗北宣言でもするかのようにため息をつき、少し笑って後ろ髪をかいた。<br />
「お前はさ、色んなとこ飛び回って色んな人助けて、色んなやつらと闘ってきたんだ。まともなやつなら、お前が困ってるって知ったら手貸すさ。世界中に味方がいるんだぞ、こんな心強いことってないだろ？」<br />
ケンがそう言うと、彼女は何か言いたげだったが口唇が震えてうまく言葉を発せないようだった。視線を落としてヒビの入ったテーブルをきつく睨み、縋るように両手で腹部を抱きしめている。<br />
「あいつには絶対言わないで。なにもかも捨ててしまうわ」<br />
「困らせてやりゃいいじゃねーか」<br />
「言わないでって言ってるでしょ！ あんた馬鹿じゃないの！？」<br />
顔を上げた彼女のその険しい表情は、堪えきれなくなったように崩れ始めていた。それを見てケンは安心したように笑う。<br />
「その意気だ」<br />
その穏やかな声を聞いた途端に、彼女は両手で口元を押さえ声を殺して泣いた。<br />
「おー、泣け泣け、この先10年分くらい泣いとけ。俺のオフィスは悪さできるように防音ばっちりだからな」<br />
「&hellip;&hellip;イライザに言いつけてやる」<br />
「おいおいおい、だたのジョークに決まってんだろ&hellip;&hellip;」<br />
彼女はひとしきり泣いてしまうと、決意を固めた晴れやかな表情に変わっていた。ありがとう、と言って席を立つ彼女を、ケンは咄嗟に呼び止めた。<br />
「なぁ春麗、その子が男でも女でも15歳の誕生日が来たらあいつに会いに行かせようぜ。あいつを、手も足も出なかったって悔しがらせたいんだ」<br />
「そうね、きっと私もあなたも、彼さえも越えられる子になるわ」<br />
春麗は微笑むと、すり抜けるようにドアの隙間から静かに出て行った。<br />
ケンは思わず武者震いをする。そしてこれからやってくる強敵に期待の笑みを浮かべた。<br />
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-END-<br />
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            <name>No Name Ninja</name>
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